頼りない夜に一つの光を

愛しきアイドルたちよ、幸せであれ

映画『花束みたいな恋をした』を観て。

 

最高にしんどくなってるというお話です。(simple is bestな感想)

 

久しぶりの投稿がNEWSゴトじゃなくて非常に申し訳ないのですが、「加藤さん吉川英治文学新人賞受賞おめでとう」ブログもちゃんと控えてるので勘弁してください(ぴえん)。その前に、忘れかけているブログの書き方のリハビリと、この映画のデトックスをさせてください(ぴえん)。

 

※以下ネタバレを含みますのでこれから観るつもり、という方はご注意ください

 

 

 

 

 

 

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いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ほんっっっっっとにずっとしんどい。(n億回目) この映画を鑑賞してからわりと時間は経っているはずなんですけど、全然自分の中から出て行ってくれなくて。我らが加藤シゲアキさんもこの映画が公開されてからすぐに観に行ったらしいのですが、2/17に生放送で出演したアフター6ジャンクション(※以下アトロク)でも、2/21に放送されたシゲ部でも散々語り倒していて。中でもアトロクで「なかなか引っ越してくれない」と話しているのを聞いた時は思わず無言で握手を差し出したくなりました。さすが信頼と安定のシゲアキ。(居酒屋テンションすな)

 

加藤さんはどちらかと言うと、"サブカルに通じている2人(特に麦くんの方)"に自分の姿を重ねていて、まさに「俺じゃん」と思うような場面がありすぎて足腰に来てる・しんどくなってる、というタイプの人だと思います。アトロクでも宇多丸さんに「加藤くんの自分ゴト化がすごい(笑)」なんてことを言われていたりもしていましたが。

 

かくいう私はと言うと、そこまでサブカルに通じている訳ではなく、ごくごく普通のエンタメを摂取してきた(と思う)タイプの人間なので、そういう意味では麦くんや絹ちゃんと自分を重ねてしんどくなる、みたいなことはなかったと思うのですが、冒頭のシーンで麦くんと絹ちゃんのサブカル通っぷりを理解することは出来て。

 

終電を逃し、はじめましての4人がなし崩し的に入った居酒屋でのシーンで「俺映画の趣味結構マニアックって言われるんだよね」と語る、"いかにも"な男性が『ショーシャンクの空に』を挙げていたり、恐らくその作品すら観たことのないであろう女性が『魔女の宅急便』(実写版)を観た、みたいな話で2人盛り上がっていて。それを聞いている麦くんの表情から読み取れる心情や内心のツッコミに共感している自分に、少なくとも"あっち側"の人間ではないのかも、なんてことを思ったり。押井守さんの登場に反応した1人だったりもしたのでなおさら。

作品の名誉のためにも念のため明記しますが『ショーシャンクの空に』は言わずと知れた、と言っても過言ではない名作ですよね!私も好きな作品ですが、この映画における立ち位置としては"それじゃない感"のある映画なのは確かかな〜と。あの場面で「それは全然マニアックじゃねぇよ!」と思った人は少なくないはず(笑)

 

そんなこんなで(雑)、"趣味が合う"というそれ以上はないんじゃないかと思う程の共通点を機に付き合い始めた麦くんと絹ちゃん。その過程もそれはもう微笑ましくて「3回目のデートで告白できなかったら云々……」という定説に乗っ取って行動を試みる、若さというある種特殊なキラメキを放つ2人の初々しさみたいなものが眩しくて、それはそれは綺麗で。そんな2人をずっと見ていたくて。だけど私たちは知ってしまっているんですよね。こんな幸せいっぱいな2人が、いずれ別れてしまうことを。

 

 

安易に構成だけで言うと『(500)日のサマー』のような描き方をされている本作ですが、個人的にはこの構成をすることによって見えてくるものもあると思っていて。

冒頭のシーンは2020年、つまり麦くんと絹ちゃんが別れた後に偶然街で再会してしまうシーンから始まるわけですが、その時にお互いの恋人に話していた内容が本作の見方のひとつと言っても過言ではないんじゃないか、なんて思ったりもします。

 

「同じ曲を聴いていたとしても、(有線イヤホンの)RとLを分け合っていたらそれは同じ曲を聴いてることにはならない」

 

この台詞こそが本作のキーとなる部分なんじゃないかな、と個人的は思っていて。基本的に本作は2人称、つまり麦くんと絹ちゃんそれぞれの視点からモノローグが描かれる訳ですが、"同じ出来事を体験しても感じ方が違う2人"が随所に描かれていることが印象的だったと思ってるんですよね。もちろん同じ場面で同じような気持ちになる、共鳴しているからこその会話や行動も秀逸に描かれているのですが、だからこそ際立つものもあったかなと。

 

1番初めにそれを感じたのは麦くんと絹ちゃんが付き合う前、お互いに「これは(相手のことを)好きなんだろうな」と感じていた場面でした。

麦くんは「会っていない時間も相手のことを考えることを好きという状態ならば、確実に(絹ちゃんのことが)好きだ。」といったようなことを感じていて。一方で絹ちゃんは「歩幅も合わせてくれるし、店員さんに横柄な態度も取らないし、ポイントカードならとっくにポイントは貯まってる」といったようなことを感じていて。単純に「男の恋愛は保存式、女の恋愛は上書き式」と言われるような、「これこそが男と女の恋愛における価値観の違い」と言われたらそれまでですが、麦くんは"理想"の恋愛の始まりを予感していて、一方で絹ちゃんは"現実"的な恋愛の始まりを予感しているように思えて。この件については後に詳しく語っていきますが。

 

1番わかりやすく描かれていた、というか決定的だった場面は先輩が亡くなったシーンになるのかな。2人がすでにすれ違い始めていた・単純に男女で感じ方が違う、という単純な問題なのかもしれないけれど、「酔うとみんなで海に行こうと言い出す人だった」と回顧する麦くんと、「酔うと女の子にちょっかいを出す人だったと回顧する絹ちゃんは、同じ出来事を体験しているはずなのに、感じていることがまるで違うんですよね。そしてそれを、もはや共有しようとすらしない。それはもう「例え格好だけだとしても同じ曲を聴いている」ことにすらならないという、2人の別れが近いことを予感させるには十分すぎるくらいの場面だったと思います。

 

麦くんと絹ちゃんのスタンスというか、"生き方"みたいなところも逆行していると見てとれるところも非常に印象的でした。麦くんは"理想から現実"へ、絹ちゃんは"現実から理想"を生きてるように見えるんです。

仕事面で言うと、麦くんは「絵で食べていく」理想から「やりたくないことも仕事にせざるを得ないしがないサラリーマン」の現実へ、絹ちゃんは「資格を取った上で就職した手堅い事務」という現実から「自分のやりたいことを発揮できるイベントプロモーションスタッフ」という理想へと、生きていこうとする世界がすれ違ってるんですよね。

 

恋愛面でもそう読み取れる場面もいくつかあって。麦くんは「一生絹ちゃんと生きていく」という理想から「例え恋愛感情がなくなっても一緒にいる」という現実へ、絹ちゃんは「(お揃いのタトゥーの話をしている場面や花の名前を教えない場面から)いつか別れるかもしれない可能性を考えている」現実から「またあの頃のような恋愛をしたい」という理想へと、一見上手くいっていたかのように見えた2人の想いが、実は初めからすれ違っているように見えることがま〜〜〜〜〜〜〜〜苦しくて苦しくて。静岡での海で、麦くんが良かれと思って限定のしらす丼を絹ちゃんに何も言わずに買いに走り、絹ちゃんが不安がったあたりから不穏な空気は感じていたけども!!

 

だからこそ後半の場面、まるで"あの頃"の自分たちを見ているかのような2人を見て「もう戻れない」ことに気がついてしまうんですよね。いや、気がついてはいたけれど目を逸らし続けていたことを残酷なほどに改めて突きつけられたというか。もう後戻りは出来ないところまで来てしまったことを再認識したというか。

 

「終電を逃す」「趣味が合う」という特別感満載のように思えた麦くんと絹ちゃんの恋は、案外普通だったんじゃないか、ともとれる皮肉な場面だったなぁと個人的には思います。なんだ、俺たち・私たちみたいな出会い方をしてる人、案外いるんじゃん、出会うべくして出会った2人なんかじゃなかったじゃん、みたいな。若さ故にそれがより一層の輝きを放つ特別感のようなものに思えてしまう独特の視野の狭さ、"運命の人"とさえ錯覚してしまうかのような痛々しさ、みたいなものが露呈してしまった場面のようにも思えました。まぁそんな冷静なこと考えながらも全然余裕で泣きましたけど。

 

 

たぶんこういう経験って、誰にでもあると思うんです。多かれ少なかれというか、麦くんと絹ちゃんほどわかりやすくなくても、"この人"だと思う人と尊ぶべき同じ時間を過ごしてみたり、麦くんのように"理想から現実"あるいは絹ちゃんのように"現実から理想"を生きていたり。多くの人にこの作品が刺さるのは、そういう意味では普遍的な人たちを描いているからなんじゃないか、だからこそ共感を呼ぶんじゃないか、なんてことを思ったりもしました。

 

共感、というポイントでひとつだけ絹ちゃんとの共通点を挙げるとするならば(私個人の恋愛観等々を語り出したらキリがないのでこの作品を観た友達と心ゆくまで語り合いたい笑)、麦くんが話している内容を聞きながら絹ちゃんが「この人は"電車に乗った時"ではなく"電車に揺られている時"と表現した」ことに心を動かされている場面にグッときました。そういう何気ないところに感じるものがあるって結構無視できないというか、大事だよなぁと個人的には思っていて。そこが付き合う基準にはならないけど、オプションでそういう感性が伴っていたら超超最高、みたいな。「贅沢言うなよ(笑)まぁわからなくもないけど(笑)」という加藤さんのツッコミが聞こえてきますが。(幻聴)

 

 

 

 

とまぁ長々と色々語ってみましたが『花束みたいな恋をした』とても素敵な映画でした。好きな邦画BEST10には確実にランクインすると思うくらい。まだ観てない方……はここまで読んでくださってないかとは思いますが、もしいらっしゃるようであれば是非おすすめしたいです。

 

 

 

しばらく麦くんと絹ちゃんと同居する羽目になることは、責任を持って保証しておきます。(笑)